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ネタが無いので本の話 昭和16年夏の敗戦 猪瀬直樹

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前の東京都副都知事で、ノンフィクション作家としては知っていましたが、読んだこと無かった猪瀬さんの本

 

書評で、気になったので借りて読みます。
(注 なんか感想が説教臭くなりました…)

 

トータルとして、大変面白く考えさせられる内容でした。

 

第二次世界大戦開戦の直前にコレからの総力戦に支柱と成るべき人材の育成を目指して、各省や民間の少壮のエリートを集めた「総力戦研究所」と、そこで机上演習として行われた模擬内閣による第二次世界大戦のシミュレーション。そして、その結果と同じ道を歩む実際の第二次世界大戦を並べて描きます。

日本人のデータ・分析と、民意・政治の解離について警鐘を感じる話でした。

 

このシミュレーションの中では、真珠湾や原爆の予想はないのですが、南方進行による米国参戦、序盤の勝利と経済力での逆転、ソ連の参戦による戦争継続断念までを昭和16年に導きます。

当然イデオロギー的に反戦のメンバーなどいるはずもなく、技術官僚として、データを追いかけ、民意による、希望的観測を除いた決断をした結果ですが。

 

この結果は当時の第三次近衛内閣に報告され、当時の陸相だった東條首相もマメに聴講していたそうですが、最終的には研修の「単なる」成果として、箝口令と共に闇に葬られます。

 

また、この本のもう一つの軸として、東條首相の実像に迫る内容に筆を割きます。
太平洋戦争の首謀者的な役回りで語られることが多い方ですが、実直さと政治家として不向きなことと、部不相応で損な役回りをある意味生真面目に受けた普通のエリートだなと感じました。

独裁者なく、国民含めた無責任者皆で始めた戦争を終わらせるために仕立てた責任者のようなものと言うのはちょっと穿ち過ぎでしょうか。

 

ノンフィクションとは、ノンフィクション作家の書いたフィクションと言う事もあるので鵜呑みには出来ませんが、現代の戦争は大衆指示無くしてはあり得ないと思ってますので、かなり府に落ちました。
(負けたり、失敗したら、大体大衆は無理やりとか騙されたとかなるんですね…)

 

シミュレーションの結果を黙殺するのは愚かだと言うのは簡単ですが、その結果が大衆の願望とかけ離れたモノのとき決断できるものなのでしょうか?

大衆が熱病のように浮き足だち、テロの危険があるなかでです。

 

小さなレベルでも、自分事になると、事業計画に対する悪くなる検討結果には目をつぶりたくなるものですが(特にサンクコストの大きなものは)、人命がサンクコストになった事に対して冷静な判断ってできるのか。

 

それが政治なのだと言ってしまえば其までですが、それを期待できる方を選挙で選んでますか?と言うの別の問になりそうです。

 

個人として出来るのは、一人一人が歴史を鑑みて世間の熱病でフワフワしないように自分で冷静に考えるようにし、そのような落ち着いた大衆になるのが、政治に冷静な判断を強いれるのではと思ったりしました。

 

また日本の一番長い日や、海軍反省会関連の本と合わせると戦争を単なる愚行と安易に考えず、色々考える契機になると思います。

 

近現代の歴史モノは軍靴の音とか、毛嫌いし、戦前戦後で断絶しているとか、食わず嫌いもありますが、やはり今に一番繋がる時代であり、連続として捉えると学ぶべきことは多いと感じます。

 

理解出来る年になったら娘さまや息子さまに薦めようと思う一冊でした。