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ネタがないので本の話 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 大木 毅

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戦史モノですが、何故かよく売れているので読んでみました。作戦論については、読んで下さいとしか言えないので、この戦争の背景や、MAX非人道性に傾いた理由にフォーカスして。

 

戦争は悲惨なものですが、最悪の独裁体制対最悪の独裁体制の戦争の悲惨の度合いは想像の遥か上を行ってました。

「欧州の天地は複雑怪奇」な、独ソ不可侵条約にて、平沼内閣が総辞職したのは近代史で習いますが、さらに間をあけず、条約破棄、ソ連進行し独ソ戦が始まる訳ですが、日本ではあまり全体的に語られない、よく判らん戦争です。

期間としては、真珠湾攻撃よりもかなり前からの戦争であり、世界大戦のもっとも主要な戦いと言えるんですね。

ドイツからの、戦争理由としては、

バトルオブブリテンの膠着で連合王国との戦争終結の失敗を挽回するため、ソ連を破り講和に持ち込む通常戦争の面。
ドイツの海上権益の喪失資源を補うため、ソ連の資源奪取を目指す収奪戦争の面。
ソ連共産主義勢力の絶滅を狙う絶滅戦争の面。

この3つの面を持ち合わせるため、当初から戦争目的が発散しており、その為作戦目標が曖昧になり、また人種蔑視(優秀なゲルマン民族と下等なスラブ民族)と政治的な恐怖が入り交じり、捕虜虐待や住民虐殺などの戦争犯罪が横行します。

作戦もソ連蔑視が影響する雑なものでした。戦後、独裁者に強制させられ開戦したと国防軍は責任放棄しますが、当時の資料開示から積極的に開戦を計画したことが判ってます。また、収奪が目的のため、国民も「生活レベルの維持」の為、独裁者に反抗はかなり少なかったのがわかっています。

一方のソ連は、スターリンに寄る粛清の影響で、軍の弱体化と、独裁者の盲信(ドイツは条約をまもるはず。守ってほしい)による警戒の放棄で、序盤戦はドイツに一方的に蹂躙されます。この多大な犠牲でさらにこの戦争の方向が凄惨な方向に向きます。

ソ連プロパガンダとして、ナポレオンがロシアに破れた防衛戦の祖国戦争を引き合いに大祖国戦争として、悪辣な帝国主義から国を守る大義名分ある戦争と喧伝します。
まぁ本来独裁者の恐怖政治ありありの政権 なんぞ守りたくないでしょうが、ドイツの戦争犯罪や解放戦争ではなく、絶滅戦争を志向したやらかたから、国民は団結。恐ろしい敵になります。
また目には目を、から、捕虜の虐待や、ドイツ系住民の迫害(ウクライナとか結構いる)など、戦時国際法から逸脱していきます。

残虐の応酬により、互いの絶滅戦争と変質していき、この第二次世界大戦最大の戦いは、クラウゼビッツが起こり得ないと説いた絶対戦争を人類が経験したことの無い規模で 起こしてしまうのでした。

 

作戦論としては、雑であったモスクワ攻略の失敗。陸軍中枢の更迭と、独裁者の統帥の専断による戦争合理性なき作戦。まかり通る死守命令。

ドイツと比較した場合のソ連作戦術の先進性。

戦後プロパガンダに使われ見えなくなってしまった事実や戦訓など

 

興味がある人には面白い本でした。万人うけは無いけど。