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ネタが無いので本の話 室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界 清水克行

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中世の歴史研究者の清水先生の本です。面白いので見つけたら読むようにしているような気がします。

 

小中学校の「道徳」には意外に日本史上の人物の言行が取り上げられていますが、中世の人物は誰一人として取り上げられていません。

現代の我が国での徳目に合致する言行と中世の人々は無縁、または希薄で現代の道徳的な人物はとても少ないのです。

中世は日本の歴史の中で類を見ないぐらいに分権(階層ごとに法があり、その上位下位が存在しない)、分散が進行したアナーキー(無秩序)な時代でした。

 

中世人は自分の利害を守るため「自力」で「暴力」を行使することを必ずしも「悪」と考えておらず、それは武士階級だけではなく僧侶や農民まで通底していました。

そこには歴史上の「○○の変」や「◎◎の乱」が目白押しであった時代であるだけでなく、様々な階層の間での無数の無意味な「変」や「乱」が巻き起こるハードボイルドな時代なのでした。

 

しかしまったく彼らが「非常識」で「非道徳的」だったかというと、そんなことは無く、現代に生きる我々と全く異質な「常識」や「道徳」があり、そのことは私たちの安住している価値観を揺るがす破壊力を持っています。

 

と前置きはここまでで

子のアナーキーでハードボイルドな中世社会を「自力救済」「多元性」「人々の絆」「信仰」を軸に語る歴史エッセイになっています。

 

とても読みやすいので興味ある人はぜひ手に十て呼んだほうが良いと言えるのですが、例えばこんな話題で語られています。

 

・日本のセクシャルな悪口の話。現代では罵倒語の少ない日本語ですが、当時の罵倒語の数は世界標準でセクシャルな罵倒語もアリアリ。例えば、アメリカではメジャーな「マザー○ァッ○ー」ですがそれに該当する「母開(ははつび)」なる言葉があり、現代の「お前のかーちゃんデベソ」につながる

滋賀県堅田イヲケノ尉(堅田の桶屋のおやじぐらいの意味)なる男は桶屋であるが、相撲の興行師(テキヤ)であり、盗賊の手練れであり、一向宗の勇猛な戦闘員であることの話(職業に縛られない生き方)

・150年間死闘を繰り返す2つの農村の話(これが同じ荘園内の話)

・結構いい加減な年号改元の話

日本国王使節として勝手に名乗って朝鮮半島と交易をしている海賊、それを取り締まる対馬の領主もグルの可能性がある話

セーフティーネットとしての人身売買、神に対する制約としての人質の話

・寺社が敵対勢力(従わない地侍にも)に使う最終兵器、呪いの祈祷の話。

 

何処からよんでも、知的好奇心をくすぐられる話題満載でした。

 

しかし、ホンマこの時代に生まれなくてよかったわ(人生ベリーハードモードしかないもん)

 

歴史好きなら超おすすめです。