尊氏、正成、義貞 揃い踏みの8巻
今までの、だらだら感を払拭する怒涛の転回です。太平記の時代は名乗りをあげつつ、ある意味スポーツマンシップ的な戦から、乱戦的な戦争に変わっていく時期。
血生臭い闘いが続くのも特徴です。
そしてあくまでも太平記を読みとくスタンスで進むため、軍記モノの荒々しさと、仏教的な無情感が強く感じる巻でした。
一人一人の思いとは裏腹に世のうねりは続き、人々は翻弄されます。
武家側の三人の主軸揃い踏みですが、各々象徴的な描かれように思います。
尊氏は、源家の再興を目指してから、視点が高くなりすぎ、主役なのに一人称視点が無くなってます。
読者が感情移入出来ないところに行ってしまいました。戦前大悪人と呼ばれた人の昭和の時代での描き方はこうしかなかったのでしょうか。
ので実は後の不幸しかない二人が実は主役なのかと段々思ってきました。
正成は軍略については、この物語随一なのですか、あくまでも市井の普通人たれとする人物と描かれており、今後不幸しかみえません。読者からは一番寄り添えますね。
義貞は物語的なわかりやすさ(単純さ)に描かれており、これからの毀誉褒貶を思うとまた不憫です。
鎌倉の戦いに入って以降は、出てくる地名が自転車で良く走る所なので、坂の険しさとかイメージできる反面、今の風光明媚さから凄惨さを想像出来なかったりします。
ちなみに近代の発掘調査では、鎌倉市内を掘るとこの時代の合戦が由来と思われる人骨がゴロゴロ出るそうです。
国破れて山河ありなのですね。